全力で突っ走る、マグロ野郎という生き方。/ mob代表 おのなお(小野真彰)
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全力で突っ走る、
マグロ野郎という生き方。
mob代表おのなお

平成30年度の調査によると、短大・大学進学率が過去最高の57.9%(※)に達しました。高学歴化が進む一方、高等教育をあえて選ばない若者もいます。若き起業家おのなおこと小野真彰もまた、高校中退という生き方を選んだひとりです。なぜ、そして今どう考えているのか、じっくりと聞いてみました。

※平成30年度学校基本調査(文部科学省)

当たり前の選択を変えたい

小野真彰(おのなお)は22歳、今年で社会人歴5年目だ。同年代の多くは現在、大学生活最後の一年を送っている。

「人より早く社会に出て、その分なにができるようになったか考えたりもしますけど、5年分のアウトプットはあるかなと」

小野はフロントエンドエンジニアであり、若き起業家でもある。自身の運営する株式会社mobは主にウェブ制作を行うが、2018年にはスパークリング日本酒の販売も始めた。mobが販売する日本酒は透明なボトルに入っており、購入者は好きな顔写真やイラストでラベルをカスタマイズできる。名前も既存のラベルもない、“特別な日に乾杯するために生まれた”プロダクトだ。

スパークリング日本酒「mob」

「DeNA在職時代にたまたま読んだ『ビジネス・フォー・パンクス:ルールを破り熱狂を生むマーケティング』(ジェームズ・ワット著、日経BP)という本がすごく面白くて。ブリュードッグというクラフトビールブランドの誕生秘話なんですけど、自分も何かやりたいなと思った。

当時まだお酒を飲んだことはなかったんですけど、自分が二十歳になったとき飲むとしたらビールかレモンサワーなんだろうな、少なくとも日本酒っていう選択肢はない。そこを変えていくことはできるんじゃないかって思ったんですね」

みんなが飲まない日本酒を「かっこよくカスタマイズ」してみようと考えた小野は、日本酒のOEM先を探して酒蔵巡りを始める。未成年で酒が飲めないので味のチェックはNEWPEACE時代の友人に頼り、資金は自らの貯金を切り崩して。思い立ったら即実行、それが“おのなお”というキャラクターの特性らしい。

野に放たれた17歳

小学校からずっとサッカーをやっていた小野は、強豪校に進学。しかし高校2年の春に怪我をしてしまい、部活をリタイアする。「部活を辞めちゃったら行く意味がない」から学校を辞めようと考えた小野少年は、あるプロジェクトを立ち上げる。

「色々な大学生に会って『なんで大学に行ってるんですか?』って聞いたりして、そのインタビュー動画をyoutubeに上げて。300人くらい会いに行きましたね。Facebookでメッセージを送って、有名な経営者の方たちにも会ってもらいました」

たくさんの大人と話した結果、今のタイミングで自分が大学に行く意味はないと判断。動画を見せた母親は「ひたすら泣いていた」という。強行突破で高校を中退、実家を出た小野は御徒町のシェアハウスに転がり込む。そこで出会ったのが、リクルートを退職後アフリカにて事業展開し、ドローンを売るためにアフリカで法律をつくったこともある夏目和樹だった。

「夏目さんが毎晩のようにアドバイスくれて、あれやったらこれやったらっていうのを実際にチャレンジしてみた。浅草まで歩いて行ってブルーシートを広げて、色紙に外国人の名前を漢字で書いて売ってみたり、wifiを貸してみたり。マヒーネだったら『魔火根』とか書いてフランス人に一枚1000円で売る。今考えたらレベル低いですけど、とりあえず色々なことをやっていましたね」

遊ぶようにビジネスをやってみる。そのときの様子を夏目がブログにまとめ、のちに朝日新聞の一面でも取り上げられた。

とりあえず突っ走る

本格的に“仕事”を始めたのは18歳の頃。ニューヨークのカウントダウン花火を東京で再現するプロジェクト「COUNTDOWN TOKYO 2016」に参加した。

「夏目さんやNEWPEACEの高木新平さんがいたんですけど。その頃はメールの書き方すら分からなくて。件名ってなに?CCってなに?という状態からのスタート。たくさん怒られました」

その後、19歳で株式会社DeNAに最年少・最低学歴正社員として入社し、出向先の横浜DeNAベイスターズでグッズECサイトの運用を担当する。

「すごくいい会社でした。年齢とか一切気にせずに『なんでできないの?』って。きつかったです。けど、やり方がわからないなりに進んでいると、みんながアドバイスをくれる。やらないと何ももらえない。やってみて、壁にぶち当たったら教えてくれる。その繰り返し」怖いものなしでチャレンジしていたように見えるが、実はそうではなかった。

「自分が好きな人たちに、こいつはちょっと違うんじゃないかって思われるのが怖かった。期待に応えられない自分が嫌だ。今もそうですけど」

たとえ失敗を重ねても、周囲に期待され続ける秘訣はなんだろう。

おのなお「ここのコーヒーおいしい」

「これやってって言われた時、できるかできないかは置いておいて一回やってみるっていうのはありますね。与えられた仕事を200%の出力でやっていくと『おのなお、いいね!』ってなる」

全力疾走、これもまた“おのなお”の持ち味だ。
小野は自身を「マグロ野郎」と表現する。

「マグロのように突っ走る。マグロって泳いでないと死んじゃうんで。あと脳みそないんで(笑)」

仕事を通してつながる関係性

小野の動きは、常に周りの人間を意識しているように見える。サッカーを始めた理由も、子どもの頃に周囲の大人たちがサッカーで遊んでくれたから、だった。

「僕というコンテンツを動かすのが楽しいし、みんなもそれを楽しんでくれるというか手伝ってくれた」

意外にも、「飲み会は苦手」だという。大学生の飲み会に行ったことがないし、楽しみ方もよく分からない。

「僕にとっての遊びは、誰かと話していること、話して実行すること。それがコミュニケーションで遊び。でも、恋愛とか昼に食べたものの話を毎日しても仕方ないじゃないですか。この人とずっと一緒にいたいなと思ったら、仕事を通じてコミュニケーションを取っている気がします」

コミュニケーションのハブとして仕事を捉える。「自分がそこにいる理由」を見出すため、できることをコツコツ増やす。エンジニアリングに止まらず、デザイン、写真撮影などを手がけることも。社会人になりたてだった5年前と比べ、「自分レベル」は格段に上がった。

間もなく同い年の若者たちが大学を卒業して社会人になる。「ずっと同い年と仕事したいと思っていた」、その日が近づいている。それまでにもっと自分の幅を広げたい。

「最近マグロになりきれていないところがあったので、もっとマグロ感を出してかなきゃいけないなと思ってます」

加速するマグロ野郎のこれからに目が離せない。

 

(写真:古屋悠 取材協力:KITASANDO COFFEE

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