感謝と行動力で、人生の伏線を回収する。 /  モデル・カメラマン 彩雪
#016

感謝と行動力で、
人生の伏線を回収する。
モデル・カメラマン 彩雪

「あなただけの履歴書を、つくってみてくれませんか?」
Proff Magazineでは、履歴書の自由なあり方を考えるために、さまざまな分野で活躍する方にそんなお願いしてみることにしました。

今回取材したのは、彩雪(あやせ)さん。高校の教師だった経験を経て、現在はモデル・役者、フリーランスカメラマンとして活動しています。
バスケと数学に熱中した学生時代、夢だった教師を1年で辞めるという決断、貯金がなくなった独立直後……。彩雪さんの履歴書から見えてくる、「感謝と行動力で、人生の伏線を回収する」生き方とは?

モデルに役者にカメラマン​、ファッションブランドのディレクションも

-今回は、彩雪さんがnoteで投稿した「高校数学教師からモデル・カメラマンになったおはなし」を読んで、「ぜひ生き方について詳しく聞きたい!」と思い、取材のお願いをしました。

彩雪:読んでいただいたんですね。ありがとうございます!

-さて、まずは現在の彩雪さんの活動を教えてください。

彩雪:今はモデル事務所に所属してモデルや役者の仕事をしながら、フリーランスでカメラマンをしています。

モデルとしては、小学4年生から大学3年までやっていたバスケットボール関連の仕事やファッションのLookbook、役者としてはCM広告やアーティストのMVなどに出演しています。2019年には舞台「火の風にのって」にも出演しました。カメラマンとしては、映像をメインに制作していますね。

あと、最近はファッションブランドのディレクターの活動もはじめたんです。

-ファッションブランドのディレクター?

彩雪:はい。2020年の7月に「8HOURS / エイトアワーズ」ってうブランドをローンチしてました。2020AWからは本格的にブランドさんやセレクトショップさんとのコラボも進んでいます。1番はじめにつくったビックシルエットフォトプリントTは、自分で撮った写真を使ってデザインして、自分がモデルになって、セルフィーで自分で写真を撮って販売する、っていうかたちでやらせていただきました。

-撮影もモデルも自分で! 彩雪さんならではの活動ですね。

モデルからカメラマン、ファッションブランドのプロデュースまでしていて、忙しいのでは?

彩雪:そうですね。でも、楽しいですよ! わたし、ずっと部活をやっていたからか、なにかに追われてるくらいじゃないと生きてる心地がしないんです(笑)。

それに、モデルもカメラマンもファッションも、全部通じてますから。モデルをやってるから、服をつくるときに「こういう服を作ったら需要あるよね」ということがわかるし、カメラマンをやってるから、モデルをやるときに「こういう画角で写るからここに立たなきゃだな」とかがわかるし。自分の中ですべてつながってる感覚はあります。

 

バスケと数学にはまった中高生時代

-彩雪さんの経歴を見ると、高校教師からモデル・役者、カメラマンの仕事へとキャリアチェンジをしたのがとてもユニークですよね。そもそも、なぜ高校の教師をやろうと?

彩雪:バスケと数学が好きだったのが大きいです。バスケはお父さんがやっていた影響で小4のときに始めて、大学3年生の秋に体育会の部活を引退するまで続けていてました。ありがたいことに、小中高大とずっとキャプテンをやらせていただきました。

数学は、中学校1年生の時にめちゃくちゃはまって。中学校の数学では物足りなくて、受験勉強をしつつ、高校の数学をやってたくらいです(笑)。親からは「スポーツだけ頑張ればいいよ」って言われていたんですけど。

-勉強だけ、じゃなくて、スポーツだけ?

彩雪:そうです。運動会で一番になったりバスケで勝ったりするとすごく喜んでくれるけど、夜遅くまで勉強してると「そんな勉強しなくていいよ」って言われるんですよ。変わってますよね(笑)

でも、わたし負けず嫌いなので、反骨精神で「いや、勉強も頑張るし!」って思っちゃう。だから勉強をするようになって、テストの順位が上がると嬉しくて、もっと頑張るようになって。なにかを諦めることがただただ嫌いな子でした(笑)

-バスケと数学にはまったことが、どうやって教師になろうという気持ちにつながったんですか?

彩雪:数学って将来なにに使えるんだろう、と考えたときに、「教師になったら数学ができる!」って気づいたんです。しかも、部活の指導をすればバスケも続けれるじゃないですか。「一石二鳥だ!」と思って。中3ぐらいの時には、数学の先生になるって決めてましたね。

 

人生に向き合う生徒たちに触れ、尊敬の念が湧いた

-大学で教員免許を取ったのち、晴れて夢を叶えて、大阪の高校で数学の教師になったものの、1年で辞めることを決意したのはなぜだったんでしょう?

彩雪:教師をやっていた1年間は、今思い返しても楽しい思い出ばっかりです。生徒のみんながお姉ちゃんみたいに仲良く接してくれたから。

ただ、担任も部活も持ってたので進路相談の時間もあったのですが、進路指導でたくさんの生徒たちの将来についての想いを聞くなかで、わたしも「やりたいことに挑戦しよう!」って想いがふくらんできたんですよね。

進路指導では、彼らや彼女たちに、「やりたいことはなに?」って聞くじゃないですか。そうやって聞きながら、「わたしはやりたいことができてるのかな?」って、自分にも問いかけるようになって。

生徒たちのなかには、高校生ですでに自分のやりたいことを持っている子がいる。一方で、やりたいことがわからないって悩んでる子もいる。どちらの生徒も、自分の人生に真剣に向き合っていて、本当にすごいなって、尊敬の念が湧いてきました。わたしもみんなみたいに、ちゃんと人生に向き合いたいと思うようになったんですよね。

-彩雪さんは、教師以外にもやりたいことがあったんですか?

彩雪:実はそうなんです。それが、カメラでした。大学3年生のとき、写真学校に行っていた友達の卒業制作を手伝ったことをきっかけに、写真にどハマりして。撮影は、自分がいいと思ったものをかたちに残せるのが楽しかったし、被写体になることも好きでした。

だから、大学4年生のとき、数学の教師になるか、カメラマンになるか迷ったんですよ。その時は、「ずっと教師になろうと思ってたのに、急に変えるのもな……」と思って、カメラマンの道は諦めたけど。

でも、どこかでカメラマンやモデルをやりたいという気持ちはあったんですよね。その気持ちに正直に向き合えたのは生徒たちのおかげです。

 

人生一度きり。やりたいことがあるなら行動しなきゃ

-そう気付いてから、実際に教師を辞めるという一歩を踏み出すまで、やはり葛藤はありましたか?

彩雪:いや、あんまり迷わなかったですね。ここで踏み出せなかったら一生挑戦しないな、と思ったから。生徒たちと同じように、新しい夢に向かって一歩踏み出そうしようと決めたんです。人生一度きりだから、やりたいことがわかってるなら行動しなきゃって。

それに、どんな仕事でも言えると思うのですが、どうしても戻りたくなったら努力をすればまたいつか戻れるはず。正直、新卒で教師になったので、就職の相談をされても社会のことがなにもわからなくて。教師として進路の相談にのるとしても、いろんな経験を積んだ方が説得力も増しますからね。

教師を辞めて、一番やりたいのが動画制作。わたしがかっこいいと思う動画の多くは東京の方がつくっていたので、「働くなら東京だ!」と思って、2017年3月に上京しました。

仕事のアテがないまま東京に出てきたんですけど、ご縁があって、友人のそのまた友人の紹介で、コンテンツの制作会社に入ることができて。いきなり動画制作はできないので、まずは数学教師の経験を活かしてアルゴリズムの解析やマーケティングに関わり、その後撮影や編集を任せてもらえるようになりました。

結局1年半くらい、その会社で働いていたんですけど、モデルの仕事も増えてきたので、2019年の4月に独立して、今に至っています。

 

運と縁と感謝で、伏線を回収する

-安定した仕事である教師を辞め、就職先が決まっていないまま上京して。しかもその後、会社員から独立をして……。なんでそんなに思い切った決断ができるんですか?

彩雪:わたし、「ケセラセラ」って言葉が好きなんです。簡単にいうと「なるようになる」って意味なんですけど。

本当に、自分で決めたことを頑張れば、あとはなるようになる。なんか、いろんなことが「伏線回収」されてくんですよね。ある経験とある経験が、思わぬタイミングでつながって、自分を助けてくれるんです。

苦しい経験でもあとで意味を持ってくると信じていて。「これまでの人生で、失敗したことは?」なんて聞かれたとしても、あんまり「失敗」ってなんなのか、わからないんですよね。

-失敗がわからない。

彩雪:あ、気持ちの浮き沈みはありますよ! 不安定なお仕事なので、「わー、来月全く仕事なかったらどうしよう」とは割と頻繁に考えます。

あと、教師を辞めて上京したときは、貯金がなくなりました。引っ越しでお金がかかったのもあるし、ジムに通ったり撮影の機材を買ったりしたので。いくらチャンスが巡ってきても、準備できていないとつかめないと思って、自己投資はしっかりしたかったんです。

そういう苦しいときもあるんですけど、ピンチになると過去の縁がつながって、なんとかなるんですよね。

 

なにか行動を起こせば、運や縁が集まってくる

彩雪:わたしのお母さんが、「人生は運と縁と感謝だからね」って口癖のようにいうんですけど、本当にそうだなって。

東京で制作会社に入れたのも、「動画を撮りたい」って友達に言ったら、その友達の知り合いが制作会社を紹介してくれて。そしたらその制作会社の仕事をして出会った方に「今度モデルやってみない?」って声をかけていただけて、メディアや広告に出ることができて。その仕事で出会ったフォトグラファーの方が、今モデルとして所属している事務所を紹介してくれて……。

わたし、本当に「運と縁」に恵まれてると思います。

-きっと、誰もが彩雪さんと同じように運や縁が巡ってくるわけじゃないと思うんです。どうして彩雪さんには巡ってくるんだろう。

彩雪:どうしてだろう……。あ、なにか行き詰まったときに、新しいことをしてみるのは心がけてますね。やらなかったらその状態のままだけど、行動を起こしてみたらなにかが変わるんですよ。

大きいことでいえば服をつくったのもそうだし、小さいことで言えばInstagramをできるだけ毎日投稿することも、わたしにとって行き詰まりを打開するための行動です。

だってこの取材も、わたしが書いたnoteを見つけてくれたからですよね。そんなふうに、なにか発信しておくと、見つけてくれる人がいるんです。

-なるほど。なにか行動を起こすことは、未来のために伏線を撒いておくことでもあるんですね。

彩雪:そうですね。伏線を撒いておくと、運や縁がつながって、いつか回収される時がくるので。

あとは、「全部本気で、ただし執着しすぎない」ということも大事にしています。自分はいろんな選択ができて、人生計画も変更できる。これって当たり前のことなのに、視野が狭くなって忘れがちだな思います。

 

自分勝手なのが、かっこいい

-彩雪さんのお話を聞いていると、世の中に存在する「人生のレール」のようなものにはこだわっていないような印象を受けます。

彩雪:そうですね。わたし、自分がかっこいいと思う生き方をしたいんです。じゃあどんな人がかっこいいかといったら、「いい意味で自分勝手に生きてる人」。

「自分勝手」って、日本語だとネガティブな捉え方をされてる気がします。でも、自分の人生なんだから、自分勝手に生きていいじゃないですか。誰かに迷惑はかけちゃいけないし、もちろん相手の気持ちを考えることも時には必要だとは思います。でも、自分のした選択に責任をもって、自分を幸せにするべきだと思っています。せっかく生きてるので、やりたいことやったらいいんじゃないかな、って。それは生徒たちにも伝えていましたね。

-彩雪さんは、あんまり人と比べたりしないんですか?

彩雪:いや、私も嫉妬はしますよ。同じくらいの年齢の方が自分がしたかった仕事をしてると、「わたしとなにが違うんだろう……」って落ち込んだり。

オーディションなんて、あからさまに人と比べられるわけですからね。落ちたら嫉妬もするし、落ち込みます。でも、そんな感情を持つのは当たり前のこと。それを糧に闘争心を燃やせばいいかな、って思います。

 

スポーツとメイクの仕事に関わりたい

-最後に、彩雪さんが今後取り組んで生きたいことはありますか?

彩雪:一番は、スポーツに関わるモデルや役者の仕事をやりたいですね。

やっぱり、スポーツに関わる写真や映像って、リアルさが必要だと思っています。わたしは今でもバスケとか筋トレとかジョギングとかをしてるので、リアルな表現ができるかなって。カメラマンの仕事でも、スポーツに関わる映像を撮りたいですね。

あとは、メイクやスキンケアの仕事も、モデルとして関わりたい。

-スポーツとはまた違うジャンルですね。それはどうしてでしょう?

彩雪:わたしの名前、「彩」に「雪」って書くじゃないですか。芸名を考えるとき、この名前をつけた理由は、肌が白いから「雪」と言う字を入れて、そこをベースにカラフルなイメージがある「彩」を入れたんです。それって、肌に色をのせるメイクとぴったりだなって。後付けなんですけど(笑)

スポーツのお仕事も、メイクやスキンケアの仕事も、こうやって伝えておくと叶うかもしれない。いつか回収される伏線になったら嬉しいです。

(執筆・撮影:山中康司)

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