行き当たりばったりを起こして、人生を楽しむ。 / SANDO店長 天野光太郎
#011

行き当たりばったりを起こして
人生を楽しむ。
SANDO店長天野光太郎

「あなただけの履歴書を、自由につくってみてくれませんか?」
Proff Magazineでは、履歴書のあり方を考えるために、さまざまな分野で活躍する方にそんなお願いしてみることにしました。
今回お願いしたのは、東京・池上のカフェ「SANDO BY WEMONPROJECTS」店長の天野光太郎さん。
Fujirock出演、福祉を通したまちづくり、飲み会での運命的な出会い、そしてカフェ経営……。「人が縁や運を運ぶと信じている」と語る天野さんの履歴書から見えてくる、“行き当たりばったりを楽しむ“生き方とは?

カフェ店長兼、音楽と他領域を橋渡しするコーディネーター

-天野さん、素敵なシャツ着てますね。そのシャツはもしかして……。

天野光太郎さん(以下、天野):いいでしょ? 僕がめちゃくちゃ尊敬してる山下達郎さんをモチーフにした刺繍入り。「Yuki “Holy” Horimoto」さんっていうイラストレーターがつくってるTシャツなんです。

-ギタリストでもある天野さんらしいシャツです。

天野:ははは、ありがとうございます! 今日は何でも聞いてください。 NGな話題はないので。

-わかりました。 今はどんな活動をしてるんですか?

天野:大田区池上にあるカフェ「SANDO(サンド)」の店長をやってます。ここは、池上のエリアリノベーションプロジェクトの拠点としてオープンした場所なんです。

-僕もしょっちゅう行きますけど、いわゆるカフェともちょっと違いますよね。地域のなかで機能を持っているというか。

天野:ええ。カフェの営業はもちろん、アーティストを招いたイベント、ポップアップショップや展示など、地域を盛り上げるための企画をやっています。最近は池上の面白い人を紹介するYoutube配信番組「池上放談」も始めました。

-天野さんはそうしたカフェの店長としての顔だけでなく、音楽の領域と他領域をつなげるコーディネーターの仕事もしていますよね。

天野:そうですね。プロフにも書きましたけど、僕こう見えて、まぁまぁに腕の立つギタリストなんです(笑)。2009年には、「nenem」というインストバンドのサポートメンバーで、Fujirockにも出演しました。

前職では楽器メーカーのフェンダーミュージック株式会社で、アーティストとの窓口になる仕事をしてたこともあって、今はフリーランスで、音楽業界と別の業界や人をつなげるコーディネーターの仕事もしてます。

僕はこれを「広義の音楽活動」って言ってます。つまりレコードを出したり、ライブやったりするだけが音楽活動じゃない。例えばラジオ番組をつくるとか、書籍を出すとか。発信方法は色々ですけど、音楽家の内面を発信する場所をつくるのも立派な音楽活動だと考えていて。

たとえば、フリーランスの仕事の一発目で、ビジネス系のウェブマガジンでの奥田民生さんのインタビューをコーディネートしたりとか。

-一発目から大御所との仕事。すごいですね。

天野:っていっても、普段飲みにいってるクリエイターたちを集めて記事をつくったので、正直「こんな楽しいことしてお金もらっていいのかな」っていう気持ちでやってましたよ(笑)。

カフェを通じて、選択肢を増やしている

-2009年にFujirockに出たあと、2010年から2015年までは横浜でコミュニティソーシャルワーカーの仕事をしてますよね。なぜ音楽の世界から福祉の世界に?

天野:Fujirockに出たころ、音楽家としての限界を感じたのと、大学では障がい者福祉と地域福祉を専攻してたので、福祉は身近なテーマだったんですよね。横浜では「福祉のまちづくり」というテーマのもと、子育て支援から高齢者支援まで、幅広くやりました。

具体的に言えば、地域住民のニーズに合わせたコミュニティや居場所をつくったり、事業を企画したり、ボランティアグループ立ち上げたり。ほぼ何でも屋でしたね。(笑)

-今のカフェと、結構異なる仕事な気がするんですが。

天野:実は僕のなかでは、一貫して「福祉」の感覚があるんです。

僕は「福祉」って、“誰もが選択肢を持てること”が大事だと思ってます。例えば、なにもない空き地にベンチをひとつ置いてみる。すると、ある人にとっては休憩場所、ある人にとってはおしゃべりする場、ある人にとってはご飯を食べる場になる。つまりいろんな選択肢が生まれます。

そして、ベンチは誰かの気づきから生まれるわけです。「ここにベンチがあったら、なにかが起こるかもしれないな」っていう気づきが、誰かの選択肢になる。

そういった、“誰かの気づきが、誰かの選択肢になる”という連鎖が起これば、選択肢が増えていくじゃないですか。だからまちでも会社でも社会でも、そういう連鎖が起こるといいな、と思うんですよね。

-その意味では、カフェも選択肢になる?

天野:そうそう。「SANDO」はコーヒーを提供する機能もありますけど、それだけじゃなくて、仕事場にもなるし、音楽を聴く場にもなるし、人と人がつながる場にもなるし。なにか地域のなかで選択肢を増やすような場所になれたら、と思ってやっていますね。

“行き当たりばったり”が人生だ

-音楽に福祉にカフェ。これまでの経歴がとても幅広いですよね。

天野:僕の人生、“行き当たりばったり”なんですよね。

僕が尊敬してやまない音楽家の大滝詠一さんが、「人生なんて人の縁と時の運」って言ってるんです。20年前に出会ったこの言葉がめちゃくちゃ刺さっていて。つまり、“行き当たりばったり”が大事ってことなんだな、と思うようになったんですよね。

-“行き当たりばったり”っていうのは?

天野:僕、「まわりの人に生かされてる感覚」がすごくあるんです。さっきの奥田民生さんの記事もそうですけど、今までの仕事も、人との出会いで生まれたものばかりで。

自分が「楽しそうだ!」と思える方向に流れていくと、“行き当たりばったり”で、常に予想もしてなかった縁や運が生まれる。それが楽しいんですよね。だから、自分にも他人にも、“行き当たりばったり”をつくることをしてます。

-自分だけじゃなく、他人にも“行き当たりばったり”をつくっているんですね。

天野:「なんかよくわかんないけど、あの人がいるから場がいい感じになるよね」って人、いるじゃないですか。その人を中心に人が巻き込まれていって、自然発生的にいろんなことが起こるような人。

僕は、自分には人と比べて秀でた能力があると思っていないんです。でも、自分で言うことじゃないですけど、僕は「あの人がいるといい感じになる」存在にはなれているのかもしれない。自分がハブになり、人と人や、人とコトがつながり、化学反応が起こることが多いので。その化学反応を、横で見て喜んでるんです。

-行くとこ行くとこで、“行き当たりばったり”が起きるような。

天野:そうそう。そんな人生が楽しいんですよね。

よくわかんないけど、夢叶っちゃったよ

-印象に残ってる“行き当たりばったり”なエピソードってありますか?

天野:ああ、ありますあります。

中学生の頃、楽器メーカーのフェンダーに入るのが夢だったんです。フェンダーのギターのカタログを楽器屋さんから持ってきて、「この会社はどうやったら入れるんだろうな……」と考えていたりして。

でも、夢が叶うなんて簡単じゃないわけで。それから、2009年にFujirockに出てから音楽の世界でやっていくことの限界を感じたこともあり、福祉の世界に入ったんですけど。

音楽を通じて仲良くなった友達のひとりに、今オカモトズで活動してるハマオカモトくんがいて、しょっちゅう飲みにいって音楽の話してたんですよね。

あるとき、ハマくんがフェンダーと専属契約を結んだんです。その縁で、飲みの席にたまたまフェンダーの方も来て、飲みながら企画会議みたいな話になったんですよ。「こんな企画をやったらいいんじゃないか」「いや、こういうのがいい」って、語り合って。

そんな話をしてたら、フェンダーの方に突然「君、うちに入ったら?」って言われて。びっくりしますよね。ハマくんも、「いいですね!」って、僕とフェンダーの間に立ってつないでくれるわけ。

僕も、まさかこんなかたちで夢を掴むチャンスが目の前に訪れるなんて思わなかったから、これは逃しちゃダメだと思って、後日メールを送りまくったんです。「私、こんなことしてて……」みたいな。

そしたらある日、「オフィスに来い」と言われて。「ついに面接か?!」と思って、ドキドキしながら行ったら、「今日は面接じゃないよ」と。「え? どういうことですか?」「今日は、お前にうちの会社でやってもらいたいことを伝える」って。採用が決まっちゃったんです。

-そんなドラマみたいなことが……。

天野:もう、「なんかよくわかんないけど、夢叶っちゃったよ」って感じですよね(笑)。それで僕はフェンダーで、ハマくんをサポートする仕事をするようになって。今思えばアーティストリレーションから営業、企画まで、いろんな仕事をさせてもらいましたね。某大手百貨店でフェンダーのギターとベースのオーダーストアの企画をやったんですけど、多分世界初じゃないですかね。これはちょっと自慢です(笑)。

もう、本当に“行き当たりばったり”です。僕が大学生の頃にたまたまハマくんと出会ってなかったらこんなことなかったし、飲み会にフェンダーの方がこなくてもこんなことなかったし。

-まさに“行き当たりばったり”ですね。

天野:人生で、たびたびそういう“行き当たりばったり”が起こるんですよ。その都度、誰かが僕となにかのハブになって、つないでくれる。そういう縁と運がなかったら、僕はいません。だから僕も、誰かにとってのハブになりたいんですよね。

人が縁や運を運ぶと信じる力が、“行き当たりばったり”を生む

-天野さんは、縁と運を呼び込む“行き当たりばったり力”みたいなものがある気がするんです。

天野:あぁ、どうなんでしょうね。たしかに、この人に仕事をお願いしたいとか、この人に相談してみようとかって思われる存在に、なぜか今までなれてたような気はします。

-天野さんの“行き当たりばったり力”って、なんなんでしょう。

天野:なんだろうな……狙ってやってるわけじゃないので難しいですけど、「人が縁や運を運んできてくれる」って信じてる、ってのは大きいかもしれないですね。信じてるから、実際にそうなる。自分もそうやって生きてきたし、自分がいることで他の人にも縁や運がつながると信じてます。

-縁や運を、自分だけのものにしないんですね。

天野:自分のことより、他人のこと考えてるのが好きなんです。仕事でも、利益になるならないは二の次で、 相手に喜んでもらえることの方が僕は嬉しい。相談してくれたら全力で返します、みたいなスタンスでいます。

だからといって、感謝されたいからやってるわけでもなくて。自分の損得よりは相手のこと考えてる。僕に相談してくれたことで何かが生まれることが一番大事なんです。

-そうやって相手のことを考えて行動してると、思わぬ“行き当たりばったり”が起こる。

天野:そうですね。 相手の期待に応えたことで生まれた関係が、想像もしない出来事につながるんです。フェンダーに入れたこともそうですし。 思わぬことが起こるのが楽しいので、結果的に自分のためになってるから、感謝されなくても満足なんですよね。

-仮に相手が、「天野さんのおかげ」って気づかなくてもいい?

天野:それはもう、ぜんぜんいい。

…… いや、そんなことないな。やっぱりちょっとは気づいて欲しいかもしれないです(笑)。

履歴書で、哲学や価値観を伝えたい

-プロフ、読ませてもらいました。書いてみていかがでしたか?

天野:他の人もプロフもみて、すごく面白かったので、僕もなにかキャラクターを出せないかなと思って書きました。面白かったです、プロフをつくるの。自分の経験の棚卸しになりましたね。

-「はじめに」にすごく思いがこめられていますよね。

天野:いわゆる履歴書って、表面上でその人がなにをしてたかっていうことはわかるんですけど、なんでこう生きていたのかとか、どういう考えを持ってるかってわからない。でも、一緒に働く上でその人の哲学や価値観を知ることって、すごく大事な気がしてるんですよね。

だから「はじめに」で、「僕はこういうことを考えて生きてます」っていうことを伝えた方が、僕がどんな人か想像してもらえるかなって思ったんです。

-「はじめに」があることで、履歴書から人間味を感じます。

天野:別に実績なんて、いくらでも書けますからね。でも人間味が出るのって、そこじゃない。「なんでそうしたのか」っていうことを、僕が採用する側だったら知りたいですからね。自分の脳みその中を開けてみせるみたいなことを、プロフを通してやれた気がします。

>天野さんのプロフ

池上を元気にしていきたい

-最後に、これから取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

天野:世の中コロナの影響で大変な状況になってしまったけど、そんななかでも、もっと池上という地域を元気にしていきたいですね。僕は別に池上で生まれ育ったわけじゃないけど、今や地元みたいな感覚になってるので。

そのためには、目の前のことを一個一個クリアしていくことが大事だなって思ってます。メニューを開発するとか、居心地の良い空間をつくるとか。コツコツやってたら、いい“行き当たりばったり”が起こる気がする。

あと、個人的には、コーチングを勉強しようかと思ってて。

-コーチング?

天野:街のカフェにいくと、実は何気ない会話がコーチングになってて、しゃべってるうちに元気になってた、なんてことがあったら面白いじゃないですか。ミュージシャンに対してコーチングをする人も、あんまりないと思うし。

だから最近ちょっと学ぼうと思って。これ、誰にも言ってないですけどね。そんなことも考えてます。

(執筆・撮影:山中康司)

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