「自分の人生は、自分で決める」。ポジウィル・岡千尋が辿り着いた“他者評価より自分の直感を信じる”生き方
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「自分の人生は、自分で決める」。 ポジウィル・岡千尋さんが辿り着いた“他者評価より自分の直感を信じる”生き方
「POSIWILL CAREER」カウンセラー/トレーナー岡千尋

自分の人生を、自分で決めることはできていますか?

「当たり前じゃないか!」という方もいるでしょう。でももしかしたら、その「決めたこと」は、実は「誰かによって決められたこと」を自分で決めたと思い込んでしまっているのかもしれません。「こう生きた方がいい」という他者の言葉は、ときとして呪いのように、人の人生を縛ってしまうのです。

ポジウィル株式会社の岡千尋(おか・ちひろ)さんにも、そんな時期がありました。24歳までに経験した大きな挫折。そしてそれを、どのように乗り越えていったのか。岡さんの「自分の人生を自分で決める」生き方について、話を聞きました。

カウンセリングをした人数は1万人以上

-まずは岡さんの現在の活動について教えてください。

岡さん(以下、岡):ポジウィルという会社で「カウンセラー/トレーナー」をしています。具体的には、キャリアで悩んでいる方に対して、カウンセリングをする仕事です。

これまでの人生を一緒に振り返ったり、自分に自信が持てるように声をかけたりしながら、これからのキャリアの意思決定をサポートするお仕事ですね。

-これまでどれくらいの方にカウンセリングを?

岡:もう、1万人以上はいってると思います。

-1万人以上!?

岡:もともとポジウィルを立ち上げるタイミングからジョインして、一人ひとりのユーザーさんの声を聞きながらサービスをつくってきたので。立ち上げ期と、24歳の頃からのキャリア支援からの数を足したら、おそらく余裕で1万人を超えてるんじゃないかな(笑)。

-それはすごいですね…。岡さんはどうして「カウンセラー/トレーナー」の仕事をしようと?

岡:自分自身が大きくキャリアで挫折し、悩んだことがあるからです。

母がとても厳しくて、私は「地元で1番の学校に進学してほしい」と言われていて。私自身その言葉を信じて疑わなかったんですよね。

「いい学校に進学して、母の期待する仕事に就いたら、幸せな人生が待っているはずだ。逆にそれが手に入らなければ、私の幸せはないんだ」とすら思っていて。だから小学〜中学時代は9年間、ほぼ受験勉強に費やしたんです。でも、受験が失敗に終わっちゃって。それで、絶望して。「私のこの9年間、なんだったんだろう」って。

本当は小さい頃からダンスも習いたかったし、みんなと遊びたかったし、ちょっとやんちゃもしたかったし(笑)。そういうやりたいことを我慢した先に、幸せな人生があると信じてやってきたわけです。だけど、一歩目で失敗しちゃって、人生の目的を見失ってしまったんですよね。

それから「なんとか取り返さなきゃいけない」と思って、大学受験も頑張ったけれどうまくいかなくて、結局関西の私立大学に入学しました。そこから、自分に自信が持ちきれなくなってしまっていたんですよね。「自分はできない人間なんだ」という気持ちが、ずーっとありました。

 

「正解」と思って選んだ会社のはずなのに、幸せではなかった

岡:そんな状態で就活を迎えて、私はエンタメ業界に興味があったんですけど、母に「そんな業界、あなたには無理でしょ。お給料をちゃんと稼げて、福利厚生もしっかりしているメーカーとか金融とかに行きなさい」と言われて。私も「そっか、私はエンタメ業界に向いていないんだな」と思って、銀行に入ったんです。ところが、いざ銀行に入ってみたら…

-思っていたような仕事ではなかった?

岡:そうですね。銀行の仕事も、その会社も、まったく否定する気はないんです。ただ、「私、これでいいんだっけ?」という気持ちが湧いてきちゃって。仕事とプライベートを両立させて、結婚して子どもを産んで…という望んだ未来に近づいてるはずなのに、幸せだとまったく思えなかった。「親や世間が言う幸せな選択をしてきた結果、むしろ不幸になってるじゃん…」って気づいてしまって。もう、なにが正解なのかわからなくなってしまったのが、24歳のときです。

いくら悩んでも、正解はわからなくて。でもどこかで、「このままくすぶってたまるか!」みたいな気持ちがあったんですよね。「本当は自分はもっとすごい可能性を持ってるんだ。このままくすぶってるのは人生もったいない!」という気持ちが。それで、思い切って転職活動を始めたら、人生を変える出会いが待っていたんです。

自分より自分のことを信じてくれる恩師との出会い

-人生を変える出会いが。

岡:はい。私、転職活動をしたら、およそ200社も落ちたんですよね。転職活動のお作法もわからないし、自信ないし、やりたいこともないから、うまくいかなくて。そんななかで、リクルートという会社の方にだけは、興味を持ってもらえたんです。

でも、リクルートに入ることって、ちょっと怖かったんですよね。自分が興味を持っていた部署が契約社員の募集で。しかも先行きのよく分からない部署の立ち上げの仕事だったんです。それまで私は、「しっかり守られた環境で、着実にステップを踏む」というキャリアを歩んできたわけですから、かなり違う環境に飛び込むことになる。だからどうしようかなぁと。

その時に最終面接をしてくれた方が、今の私の恩師なんです。

-どんな方なんですか?

岡:私の人生ではじめて、私の可能性を自分以上に信じてくれた方なんですよ。

それまでの私は、受験に失敗したこととか、転職で200社落ちてることとかを、恥ずかしくて誰にも言えなかったんです。だけどその方は、私が恥ずかしいと思っていた話を全部聞いてくれて。「その経験があってこそ、君の人生だよ。その挫折が、今後の可能性を広げてくれるから、自分の可能性を信じた方がいい。君が信じられないなら、私が信じるよ」と言ってくれたんですよね。

-それは、とても支えになる言葉ですね。

岡:はい。さらに、その方に、「他人の価値基準ではなくて、自分の直感に従って生きた方が楽だよ」と言われて。その言葉を、今も大事にしています。

-他人の価値基準ではなくて、自分の直感に従う。

岡:それまでの私は、24年間、他人の価値基準で生きてきたんですよね。本当は勉強も好きじゃなくて、もっとやりたいことはあった。でも、親に「勉強するのが幸せにつながるから」と言われて、我慢してきたんです。

だけど、心のどこかで「おかしいな」と感じてたんだと思います。そんな違和感があったことに、恩師の一言で気づくことができた。それで「この人と一緒に、自分の直感に従って働きたい」と思って、リクルートに転職することにしました。

-お母さんは、その決断についてなんと言っていましたか?

岡:「契約社員なんて馬鹿なんじゃないの?」とか、「せめて3年は続けなさい」とか、たくさん言われました。でも、「もう私のことは私で決める!」と。他人の意見に惑わされず、自分の人生は自分で決めるということを、そのときに決意したんです。

 

うまくいってもいかなくても、自分の人生は自分で決める

-「自分の人生は自分で決める」。力強い言葉ですね。

岡:自分が生きていく上で、すごく大事にしてることです。それは仕事だけではなく、結婚や家族に関わることもそうで。うまくいったとしても、いかなかったとしても、自分で決めることが大事なんですよね。

他人から「こうしなさい」と言われたことをやっていると、たとえ目標が達成できたとしても、自信にならないんです。「できて当たり前じゃん」という気持ちになってしまう。逆に、できなかったときには自己肯定感が落ちてしまいます。私はずっと失敗してきたから、「私、できない人間なんだ」みたいな思い込みが取れなくて。

-「自分の人生は自分で決める」ようになって、その思い込みがなくなっていったんですか?

岡:そうですね。もちろん最初は不安もありましたよ。リクルートに入った直後は、「契約社員だし、ここを早期退職したら私の人生どうなっちゃうんだろう」と思ってました。

それでも、入った以上はやりきると決めたんです。「自分の人生のなかで、今は結果にコミットする時期。だから、かならずMVPをとる。そして1年でリーダーレベルになる」と。

そしたら、ちゃんと結果が出て。自分で決めたことに対して結果が出た、という成功体験を積めたことが、すごく自信になったんですよ。「やっぱ私、やればできるんじゃん!」みたいな。仮にできなかったとしても、次はどうやったらできるかを考えればいい、という気持ちになっていったんです。それからは、他人からの評価を気にしなくなりましたね。

 

履歴書ではわからない、人の可能性に向き合いたい

-この連載ではみなさんに「履歴書」についての考えを聞いています。「履歴書」について、なにか思うことはありますか?

岡:これまで多くの方のキャリア支援をするなかで、「履歴書だけではその人のことはわからない。…というか、わかってたまるか!」みたいな気持ちをずっと持っていました。

相談にくる方のなかには、私のように親や先生の言うことに従って人生を歩んできた結果、自己肯定感が低くなってしまっている人も多いんです。だから私はカウンセリングで、「どういう就職先を選ぶか」よりも、「自分自身は、本当はどういう生き方をしたいのか」「自分にはどういう良さがあるのか」ということに向き合ってきました。

人と向き合うって、結構泥臭いことだと思うんです。だから、周りの人たちからは非効率だし、賛同されないことも多かったです。既存の転職システムだと、ビジネスモデルの構造上、そこまで向き合うことも難しく、これまでのその人ご経験にもとづいて求人を提案する仕組みが主流だと思います。

でも、そのアプローチで問題が解決できる人と、できない人がいるんです。既存の枠組みに囚われず、自分の新たな可能性を模索したいという人も少なからずいると思いますし、カウンセリングではそういう可能性に丁寧に向き合っていきたいと思っています。

-岡さんにとっての恩師のような存在に、岡さん自身がなっているのかもしれないですね。最後に、今キャリアに悩んでいる人になにか声をかけるとしたら、なんと伝えますか?

岡:「駄目な自分も好きになってください」という言葉でしょうか。私も、恥ずかしいと思っていた体験を自分で受け入れられたときに、大きく人生が変わったので。受験で失敗したとか、就活うまくいかなかったとか、病気でニートになっちゃったとか、離婚したとか。本当に色々ありましたけど、そういう経験を否定していると苦しいですからね。

「かつては挫折をしたけど、今思い返せば意味があることだったな」と考えられるといいんじゃないかな、って。そう伝えたいです。

(執筆・撮影:山中康司)

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